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zoom RSS アスカの家出

<<   作成日時 : 2011/12/05 01:20   >>

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「なぁ、センセ。驚かすんはええけどほんまに大丈夫か?」

「ああ、そうだぜ、シンジ。この数日、惣流の機嫌の悪いことっていったらなかったからな」

「そう?そんなに変わらないように感じたけど」

 あっさりとした碇シンジの返事を聞いて、鈴原トウジと相田ケンスケは顔を見合わせてそして示し合わせたかのように同時に肩をすくめた。
 
「これや。安心しきっとる」

「行くところまで行ってるんならまだわかるけど、これでキスもしてないっていうんだからな。シンジ、お前らエヴァンゲリオンに乗ってセックスに対する関心なくなったんじゃないか」

「ち、ちょっと待ちぃな。ワシも乗っとったんやで、エヴァに」

 鼻息も荒く、トウジはケンスケに詰め寄った。

「ああ、そうか。トウジも乗ってたんだっけな。それじゃ、さっきの方程式はあてはまらないな」

「当然やで。ワシは昔も今もあっちのことには興味津々…って、おい!何言わせるんや」

「トウジが勝手に言ってるんじゃないか。まあ、いいか。今日は友情の星の下に全面協力してやるんだから、プラトニックなシンジに敬意を表してやるよ」

 ニヤリと笑ったケンスケは、ネルフ解体後もふたりきりで同じ家に住んでいて、それでもキスひとつしていないという親友の肩を叩いた。

「あと残った買物はプレゼントと食料品だけだよな。急ごうぜ、シンジ」

「そやで。いくら惣流に居残りをさせてるっていっても、あのじゃじゃ馬やからの、勝手に帰るかもしれへん」

「その時はすぐに連絡しろよ。監視部隊鈴原隊長」

「おう、任しとかんかい」

 胸を張ったトウジはふたりの親友を街へと送り出した。
今日、12月4日は惣流・アスカ・ラングレーの誕生日である。
自己申告したわけでなく、6月6日のシンジの誕生日も華麗にスルーされたのだが、高校進学用の調書をちらりと見た時に、同居人の誕生日をようやく把握したわけだ。
そういうのんびりしたところが、友人たちには理解できない。
自分たちならば好きな異性の誕生日など真っ先に調べるものだと思うからだ。
もっとも日々の暮らしをともにしているという安心感がシンジをよりのほほんとさせているのかもしれない。
今回のサプライズ誕生パーティーにしても、シンジが中心に企んでいるのではなく他の二人が、面白がってというものも手伝ってだろうが、あれこれと考えているのだ。
心が通じたからとかで安心しきっているシンジに、ああいうじゃじゃ馬だから突然姿を消すかもしれないぞと脅しをかけることもあるのだが、それでも以前の彼とは見違えんばかりに微笑んで済ませるという大人の対応に二人の友人は苦笑するだけだった。

 さて、アスカ。
トウジとケンスケが深く頭を下げてお願いしたことで、担任教師はサプライズパーティー企画に一役買ってくれた。
アスカと洞木ヒカリの二人にプリントの整理を依頼するという大事な役どころだ。
放課後の彼女を2時間足止めすればその間にパーティーの準備ができるというわけである。
先生としても5種類のプリントを200人分にわけるという作業を生徒に押し付ける、いやお願いできるのだから勿怪の幸い。
ホームルームの終わりにヒカリとアスカを職員室に呼び出して、見事に二人をプリントの山が置かれた一室へと誘導した。
その段階で、アスカの不機嫌さは傍目で見てもわかるレベルに達していたのだ。
一緒にいるヒカリが声をかけにくい状態で、何も知らない彼女が後は私一人でやっておくからいいよとアスカに申し出た時には廊下で監視作戦実行中のトウジは大きく慌てたものだ。
やっぱりいいんちょは優しいのぉ…とにやけつつも、アスカがだったら帰ると言い出しはしないかと携帯電話を準備したが、さすがに親友に作業を押し付けて勝手に帰るほどの暴挙をアスカは選択しなかったようだ。
そのかわりアスカの作業スピードはかなり早くなっていったのは廊下からでもわかった。
これでは予定よりも早くなるかもしれないとトウジは会議室から少し離れてケンスケへと連絡する。
するとあとは食料品だけだと聞いて、それならば何とかなるかとほっとした、その時だった。
会議室からアスカの大声が聞こえてきたのだ。

「じゃあね!」

「アスカ!」

 ヒカリの叫びとともに、会議室の扉ががばっと開く。
トウジは慌てて物陰へ身を潜めたが、顔を覗かしたときにはすでに鞄を抱えて昇降口へと全力疾走するアスカの背中が見えるだけであった。
あわわと携帯電話を持ち直したトウジだったが、すぐにはボタンを押せなかった。
何故ならば、彼の愛する女性が血相を変えて部屋から出てきたのだから。

「わわわ、い、いいんちょ!」

「大変!先生に言ってこなきゃ!アスカが!」

 少し離れた職員室へと駆け込んでいくヒカリを見送って、トウジは大いに動揺した。
彼女が最後に付け加えた言葉が彼を驚かせたのだ。
そして、緊急連絡がケンスケにもたらされた。

 「何だって?惣流が家出?」

 電話の向こうのトウジはいつもよりもさらに関西弁オンパレードとなってしまっていて、ケンスケは聞き取るのが大変だったのだが、それでも肝心のアスカが「家出する!」と宣言して教室を飛び出したことだけはよくわかった。
電話をとりあえず切って、落ち着いて聞けよとシンジに前もって告げてから事の次第を教えたのだが、シンジが落ち着いているわけがない。
安心しきっていただけに、想定外の事態に彼は逆上した。
食料品が入った袋を放り出して、彼は突っ走った。
あれならばマラソン大会で上位入賞できるのではないかという勢いで彼らが住まうマンションへの道を駆けていく姿を見送ってから、ケンスケは溜息混じりに飛び散った食料品を袋につめ直す。
割れ物が入ってなかったのがせめてもの救いだと思いながら、これからどうするかと彼は思い悩んだ。
だからもっときちんと恋愛関係に進めるべきだとシンジに対して、冗談8割であったが口を酸っぱくして言っていたではないかとケンスケは首をふる。
きっと気の短いアスカが焦れたんだと結論付けたその瞬間であった。
トウジからの連絡を示す携帯に耳を当てると、そこから聞こえてきたのはじれったくなるくらいに要領を得ない関西弁だった。

「あんな、せやから、つまり、そやねん。なんちゅうたらええか、う〜ん、そやからな、家出やねんけどな」

「はっきり言えよ。シンジのヤツ、泣き出しそうな顔して走ってったぞ」

「そ、そうかいな。まあ、そうなるやろな。はは…、えらいことしてしもうたな、ワシ」

「おい、トウジ。いい加減にしろよ。どういうことなんだ?」

「つ、つまりな、惣流は家出するんやのうて、家でするってことやねん」

「待てよ。どういう意味…」

 ケンスケは了解した。
トウジがヒカリの言葉を誤解しただけのこと。
肩の力が抜けたケンスケはトウジに「馬鹿」と一言だけ言う。

「馬鹿はやめてぇな。アホにしてんか?あ、阿呆やのうて、アホやで」

「うるさい、馬鹿トウジ。罰ゲームだ、お前、今からここに荷物を取りに来いよ。シンジのヤツ、全部放り出して行きやがった」

「あ、せやけどな。その荷物いらへんねん。いいんちょが言うにはな…」

 トウジの説明を聞いて、ケンスケは大いに了解した。
食料品を買いに行く暇がないから、5時に宅配便が自宅へと届けてくれるように設定しており、それでアスカは焦っていたのだ。
事情を口早に説明し、プリントを鞄に詰め込めるだけ詰め込み「家でする」と言い残して飛び出していったのはわかる。
だが教師に命じられたことを途中で変更したからと急いで事情説明に向かったヒカリはあまりに真面目すぎるし、その言葉を聞き間違えたトウジはかなりの慌てものだ。
しかし、これでシンジとアスカはうまくいくのではないか。
シンジは彼女への誕生日プレゼントをポケットに入れていたのだから、他の荷物を持たずに帰宅してもまったく問題はないだろう。
それに誤解したままでアスカに会った方が本音で話ができるはずだ。
わざわざ間違いだと電話連絡するのも野暮だ。
人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られて死んでしまえと昔から言われているではないか。
この様子ならば、今日の二人はどこまで進むかわかったものじゃない。
大好きだ宣言は当然として、その後に待ち構えるのはAか。
それともB?まさか、C!
想像を逞しくして少し頬を火照らしたケンスケはトウジとヒカリが到着するのを待った。
今日はその食材をヒカリの家に持ち寄って三人プラス洞木家の面々で、惣流アスカ生誕記念パーティーを勝手に催すことにしたのだ。
もちろんその場に主賓は不在である。
主賓たるアスカとシンジはふたりだけで好きなことを好きにすればいい。

「まったく…。自分の誕生日を利用して半年前のシンジの誕生日を祝うってこじつけもいいところだぜ」

 街角のベンチに腰掛けたケンスケはタバコの代わりに胸ポケットにさしていたシャープペンを唇に挟んだ。
もちろん煙は出ないから、自分の口で「ぷぅ〜」と気分を出す。
さっきの電話の雰囲気から考えると、トウジとその思い人であるヒカリの関係も進みそうな気がしてならない。
いやそうなるに決まってる。
自分以外の恋愛勘はかなり強いと自負する彼なのだ。
ケンスケはシャーペンを乱暴にポケットに突っ込んだ。

「ええい、くそ!このぶんじゃ、俺だけ寂しいクリスマスかよ!そんなのいやだぜ!」

 ケンスケは空を仰いだ。
12月の夕空はとっぷりと暮れていく。
誰に声をかけようかと第壱中学校の女子生徒の顔を次々と思い描くのだった。

 翌日、ケンスケにしめあげられたシンジは顔を真っ赤にして報告させられた。

 なんと、Aに、ダッシュがつくそうだ。
しかし、ダッシュの内容については頑として口を割らないシンジだった。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ジュンさんこんばんは。
久々の新作。ありがとうございます。
しかし中学生の分際でさぷらいずぱーちーとは生意気な。
まーでも、サプライズならではのドタバタですね。この辺りの詰めの甘さは。
あまり秘匿も度が過ぎると、かえってしらけたりするから(経験済み)、こんなもんでいいんでしょうね。
しかし半年遅れのサプライズってどうよ。素直じゃないのも程々にしないと。
Aダッシュ。深〜い方ですかね。
変換ミスでA奪取と出た。キス奪還とか、そっちもあり?


先日は、愚娘が失礼を致しました。
ちゃんと叱っときました。マッカトニーとかを。
肩は揉んでもらえませんでした。ジュンさんが男と間違えるから・・・
家内と考えた間違えた理由。
1 単純にうちの家族構成を知らない。
2 文章が子供っぽくって弟と間違えた。
  (普段使っているメール用語や、絵文字を省いた結果らしい)
3 文章から男らしさがにじみ出ていた。

私達の予想は3です。

母は昔は寸止めができたんですけどね。
立花ァ千代由来の薙刀という大デマとともに懐かしい痛みでした。
グロス
2011/12/08 17:49
グロス様、こんばんは。
まずは、娘様にお詫びをいたします。
完璧に誤解しておりました(滝汗)。うろ覚えの家族構成で“息子様”がいらっしゃると認識しており、勝手に思い込んでいた始末。
平身低頭でございます。
よろしくお伝えいただけませんか。
答えは1で、息子様と思い込んで読んでいたために眼が曇ったということです。
やっぱり老眼鏡(近眼用の)が要るのかしらん。

シンジは成長したことを見せようとしたあまりの、背伸び秘匿ですね(笑)。
この時期の男の子には、ええ、本当にありがちなことです。誰にでもひとつやふたつやみっつやよっつは覚えがあるはず。
中にはカッコをつけて恋心を隠したがための悲劇なんていうのもよくある話。
素直が一番だと数十年前の自分に教えてあげても、絶対に納得しないだろうな(笑)。

ダッシュは深さか、それとも面積か?
作者も考えていませんでしたので、読むほうで決めてください。
おさわりを付け加えるとB方面に移行しちゃいますからね。
あくまでキッスを中心に(笑)。
私的にはバードキッスで溢れる言葉付き(お互いの)のためにダッシュをシンジがつけたと思います。
言葉だから余計にケンスケには言えなかったと。
ジュン
2011/12/18 00:22

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